酒蔵の町・瑞浪
岐阜県瑞浪市は、古くから醸造の営みが暮らしの近くにある町です。瑞浪・土岐・多治見と続く東濃は、美濃焼を焼いてきた土地でもあり、土と水を扱う手しごとが積み重なってきた一帯です。私たち comet coffee(コメットコーヒー)が敷地を構える中島醸造も、1702年(元禄)創業、300年以上にわたって日本酒を醸してきた蔵です。「小左衛門」「始禄」といった銘柄は、この土地の風土と水から生まれてきました。
蔵のまわりには、酒を受け取りに来る人、働く人、ご神木に手を合わせる人——300年ぶんの人の行き交いが積み重なっています。その「人が集まってきた場所」の空気のなかに、私たちのコーヒースタンドはあります。
日本酒と「仕込み水」
日本酒の味わいを決める大きな要素のひとつが、「仕込み水」です。酒の成分の多くは水であり、どんな水で仕込むかによって、酒の質や風合いは大きく変わります。だからこそ酒蔵は、その土地の水を大切にし、水の個性と向き合いながら酒を醸してきました。
水と、時間と、微生物。日本酒づくりは、この土地の水の物語でもあります。
水と、コーヒーと
コーヒーもまた、一杯のほとんどが水でできています。豆の個性を引き出すのは、湯温や挽き方だけでなく、その水そのもの。水と向き合うという一点で、日本酒づくりとコーヒーの抽出は、静かに響き合っています。
酒蔵が仕込み水と向き合ってきたように、私たちも同じ町で、水と豆に向き合いながら一杯を淹れる。この土地の水で淹れた一杯が、ここで過ごす時間の余韻になっていきます。
硬度という物差し
もう少し具体的に書きます。水にはカルシウムやマグネシウムなどのミネラルが溶けていて、その量を硬度と呼びます。硬度が高いほどコーヒーの成分は強く引き出され、重く、渋みが出やすくなる。低すぎると、今度は輪郭がぼやけて薄くなります。
同じ豆を、同じ淹れ方で落としても、水が変われば別の飲みものになります。産地や品種を選ぶのと同じ精度で、水を選ぶ必要がある。そういう物差しです。
comet coffee は、清酒「小左衛門」を醸す中島醸造の仕込み水をそのまま使っています。何百年も、この土地の水と向き合ってきた蔵が選び続けてきた水です。一杯の1%が豆で、99%が水だとすれば、そのどちらも味であることになります。瑞浪のコーヒースタンド comet coffee で飲む一杯の背景には、この水があります。
蔵の隣でコーヒーを淹れるということ
酒づくりも、抽出という手しごとも、「待つこと」と「向き合うこと」の繰り返しです。観光地のにぎわいとは少し違う、静かな佇まいのなかで、ふと一杯を求めて立ち寄り、気づけば誰かと言葉を交わしている。蔵の隣でコーヒーを淹れる私たちが目指すのは、人が集う場所で、やわらかな余韻を手渡すことです。
この水で淹れた一杯は、岐阜・瑞浪の酒蔵カフェの中庭や軒下席で飲んでいただけます。ご神木の下のベンチや、瑞浪の山のクロモジを添えた一杯のことも、あわせてどうぞ。
※ 本文中の醸造・酒づくりへの言及は、この町の文化とお店のある場所を伝えるための表現です。特定の健康上の効果・効能を示すものではありません。